Trend Summit 2013 - 2014

トレンド総研では、毎年12月に、生活者への意識調査結果やメディア動向などをもとに、その年のトレンド分析および、翌年のトレンド予測を実施しています。

本年は、『トレンドサミット2013 - 2014』と題し、商品ジャーナリスト・北村 森 氏をゲストにお迎えした「トレンド座談会」や、各分野の有識者への「2014年のトレンド予測インタビュー」を実施いたしました。

今回トレンド総研では、商品ジャーナリスト・北村森氏をゲストにお迎えし、2013年のトレンド分析および、2014年のトレンド予測をおこなう「トレンド座談会」を開催いたしました。

【座談会参加者】
北村 森 氏(商品ジャーナリスト)/山口 真侑川浦 真吾(「トレンド総研」主席研究員)

北村 森(商品ジャーナリスト)
北村 森(商品ジャーナリスト)
「日経トレンディ」編集長時代から、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターとしても活動。退職後、商品ジャーナリストとして活動。 原稿執筆、テレビ、ラジオ番組への出演、講演活動などとともに 地方自治体と連携する形で地域おこしのアドバイザー業務にも携わる。著書に『途中下車』(河出書房新社)、『ヒット商品航海記』(日本経済新聞出版社 共著)。

2013年トレンド分析

「価格」ではなく「価値」へのシフト

川浦:
それではまず、「2013年のトレンド分析」から話を進めたいと思います。2013年もさまざまなモノ・コトが話題になりましたが、特に印象的だったトピックスはありますか?
山口:
2013年は、アベノミクスにより、ひさびさに消費意欲が活発になりました。生活者への調査によると、「実際の懐事情には変化がない」という声もみられましたが、ひさびさの好景気ムードは、人々の消費マインドにも影響を与えたのではないでしょうか。
川浦:
お中元・クリスマスプレゼント・お歳暮などでも、高級志向のものが登場し、注目を浴びましたね。
山口:
その一方で、リーズナブルな価格のものも人気を集めました。
「ASOKO」や「フライング タイガー コペンハーゲン」などの低価格雑貨や、「俺の~」シリーズ(俺のイタリアン、俺のフレンチなど)がブレイクしたほか、美容業界でも、資生堂のお湯で落とせる化粧下地「FWB」、 品切れ続出で話題になったまつ毛美容液「スカルプD ボーテ ピュアフリーアイラッシュ」、若い女性を中心に人気を博した「涙袋メーク」アイテムなど、高級路線のものよりも、プチプラだけれども「効果」にインパクトのあるものがヒットした印象があります。

単純な“節約志向”によるプチプラブームではなく、デザイン性が高い、高級感のある料理など、「価値」の高さを見抜いてお金を使う人が増えたのではないでしょうか。
川浦:
下半期に起きた食品の産地偽装や大手百貨店・高級店の食材誤表記問題などに関しても、こうした風潮があったからこそ、世間からも大きな問題として注目されたと言えそうですね。
北村 森(商品ジャーナリスト)
北村:
そうですね。「アベノミクス」に関連した事象としては、2つのことが言えると思います。
まず、アベノミクスによって景気が上向きムードになったこともあり、特に日用品において、「ちょっと高くてもいいものを」という消費者の志向がさらに強まりました。2008年のリーマンショック以降、節約志向が続いていましたが、最近は1足2,000円する靴下など、「コモディティ化した商品カテゴリーでありながらも値段が高め、という商品」が売れています。「モノの値段には理由がある」、「いいものは値段が張る」ということに、消費者も気付き出したと言えます。
山口:
「安ければよい」のではなく、きちんと値段に見合った価値が提供されれば、消費者はきちんとお金を出すということですね。
北村:
その通りです。また、「アベノミクス」が実収入にはさほど影響を与えなかったという声もある、という話が先ほど出ましたが、2つ目として挙げられるのが、消費者の「アンビバレント」な動き。つまり、「高いものも買う」し、「安いものも買う」という、一見相反する動きを、1人の消費者がおこなうということです。
川浦:
確かに、普段は上手にやりくりしつつも、本当に欲しいものにはお金を使う、という人は増えていますね。
北村:
安いものを買う場合も、決してガマンしているのではなく、意思をもって選んでいる。消費者の「見る目」や「選ぶ力」が向上しているのだと言えます。

ハコモノからコンテンツへ

川浦:
続いての話題に移りたいと思います。
2013年を象徴するものとして挙げられるのが、スマホ・タブレットの躍進です。「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」に代表されるアプリ、「LINEのスタンプ」など、様々なコンテンツに注目が集まりました。
山口:
アプリは個人での開発も増えましたよね。動画なども様々なツールが登場したことにより、開発が簡単になりました。
川浦:
個人のクリエイターの活躍の場が拡がり、自由な発想からコンテンツが開発されるようになりました。プラットフォームの拡充のもと、コンテンツ志向が広がったと言えるのではないでしょうか。また、デジタルの世界だけではなく、地域活性化についても、多様なコンテンツを利用した地域PRが注目を集めました。B級グルメ、ご当地キャラクターなども盛り上がり、 非公認キャラクターである「ふなっしー」なども人気をあつめました。
山口:
SNSが後押ししている部分も大きいと言えますね。予算がなかったり、大規模な施設がなくても、面白いもの、共感を得られるものは拡がる。
北村:
確かに、ハコモノビジネスは終焉に向かいつつあると言っていいでしょう。そのぶん、時代にあった「コンテンツ」が重視され、低予算でも面白いものが求められていく。
山口:
個人発信のコンテンツも、ますます増えていくでしょうね。
北村:
とはいえ、個人のコンテンツは玉石混合。閲覧する側にもリテラシーが求められます。一方で、面白いコンテンツがきちんと提供されさえすれば、先ほどの話と同様、お金を払ってでもいいものを楽しみたいというニーズは多いと思います。

北村 森(商品ジャーナリスト)

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止まらないコンビニの勢い

山口:
もう1つ 、2013年に注目が集まったものとして「コンビニ」のサービスが挙げられます。「日経TRENDY」の2013年ヒット商品ベスト30でもコンビニコーヒーが1位になりましたが、そのほかにも、宅配サービススタート、生鮮野菜の取り扱い拡大、ネットワークプリンターを利用したコンテンツサービス、一番くじの人気上昇など、サービスの展開には目を見張るものがあります。
川浦:
サービス展開だけでなく、商品の取り扱いについてもますます拡充していますね。話題のPB商品の充実にはじまり、大手化粧品メーカーとのコラボコスメや、調味料や加工食品など料理に便利な食品をそろえるコンビニが増えたり、イベント時にはギフト商品もラインナップが拡大したり…。
山口:
スーパー、ドラッグストア、百貨店など、さまざまな小売店の機能をコンビニが持ち始めている印象があります。
川浦:
ひと昔前までは、スーパーなどが閉店時間を迎えているから仕方なくコンビニに、という人も多かったのではと思いますが、今ではむしろ積極的にコンビニを利用している人が多そうですね。
北村:
最近のコンビニは、本当に発展が目覚ましい。かつては、コンビニ業界はすでに飽和状態と言われていましたが、病院・大学・マンション内など、生活導線の至るところに出店が進み、サービスがどんどん拡充されたことで、コンビニは新たな可能性を切り拓いたと言えます。
山口:
多くの生活者にとって、コンビニは、今や日常になくてはならないものですよね。
北村:
振り返ると、2011年の東日本大震災も1つのターニングポイントになりました。当時、水や食材など、広い地域において「モノ不足」が生じたことで、普段はスーパーやドラッグストアなどを利用している主婦やシニアがコンビニに足を運ぶきっかけができたのです。これまで利用しなかったコンビニの便利さに、この時あらためて気付いた人は多かったのではないでしょうか。
川浦:
最近のコンビニは、PB商品やオリジナルスイーツもクオリティーが高いですし、一度良さを知ったことで、通わずにはいられなくなってしまった人も少なくないでしょうね。
北村:
コンビニは、ここ10年、どんどん他業界をとりこむ動きをしているので、今後もサービスは拡充していくでしょうね。ちなみに、個人的に注目しているのが「おせち」です。
川浦:
最近は「おせち」を外で購入する人も増えていますからね。
北村:
オリジナルの食品のクオリティーが向上していて味も期待できるコンビニの「おせち」が今後受け入れられていく可能性は高いと思っています。あとは、コンビニおせちの品質を、消費者にどう訴求するかがカギでしょう。また、「おせち」を外に注文すると、受け取って自宅まで運ぶ際に崩れてしまう点を心配する人が多いと思いますが、家の近所にあるコンビニであれば、距離が近くて崩れる懸念が少ないなど細かな部分でもメリットは大きいと思います。